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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1752号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人小林四郎の上告趣意について。

原判決の確定したところ(理由第一(三))は、被告人は三沢村々長伊藤秀雄の記名捺印ある世帶主被告人の家庭用米穀配給通帳中に「世帶主、武藤喜平次」と記載してあったその「喜平次」の部分を指先ですり消し、其處にインキ等を使って、亡弟の名「六郎」の字を書き込み、恰も世帶主武藤六郎に交付せられた通帳のように改竄したというのである、およそ、家庭用米穀配給通帳は各世帶毎に交付せられるものであって、右通帳における世帶主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帶主甲名義の通帳と同乙名義の通帳とは、たとえ通帳自體は同一物が利用せられ從ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない、されば原判決が前示被告人の所爲を以て村長伊藤秀雄の作成にかゝる世帶主被告人名義の通帳を利用して世帶主武藤六郎名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書僞造罪に問擬したのは正當であって、右は公文書變造の罪にあたるものであると主張する論旨はあやまりである、從って、右文書行使の所爲に關する擬律についても、原判決に所論のような違法のないことは、特に説明するまでもないところである。

よって、刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎)

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